ロシア文学 <文学・ロシア・歴史>

11世紀から現代までのほぼ1000年にわたるロシアの文学の歴史は、18世紀初頭のピョートル1世の改革を境に、中世と近代に大別される。

また、ソビエト政権樹立後の文学をソビエト文学とよんで、革命前のロシア文学と区別することも行われてきた。

しかし、1991年のソ連邦崩壊以後は、社会主義的価値観の喪失による混沌とした世相の「ポスト・ソビエト時代」に入り、文学界もポスト・モダンの傾向が台頭している。

ロシア文学は、10世紀末、キエフ大公国がギリシア正教を国教と定めたのと前後して、主としてブルガリアから、いわゆる教会スラブ語で書かれたビザンティンの宗教文献の翻訳がもたらされたときに、その成立の可能性を与えられた。

教会スラブ語は、当時のロシア語にきわめて近いマケドニアの土語を基礎とする文語で、ロシアに入ってからは世俗的な目的にも用いられ、17世紀までロシア語そのものより優勢であった。

現存する最古の文献である『オストロミール福音書』の書かれた11世紀中ごろから17世紀末までの約650年間を、一般にロシア文学史では「古代」と名づける。

この時期の作品は、概して宗教的ないし教訓的色彩の強いもの、あるいは、なんらかの実用的な目的に奉仕する「社会・政治評論的」傾向のものが大部分を占めている。

ただし文字による文学のほかに、純粋に世俗的で芸術的にも優れた口碑文学のジャンルがすでに11世紀以前から豊富に存在していたことは明らかで、「古代」ロシア人の美的欲求は主としてこの口碑によって満たされていたものと思われる。

これらのフォークロア作品には、おとぎ話、説話などの散文のジャンルのほかに、儀礼歌、叙情歌などの詩的ジャンルに属するものも豊かで、とくに「ブイリーナ」とよばれる古代英雄叙事詩は芸術的価値も高く、イリヤ・ムーロメッツ、ドブルイニャ・ニキーチチ、ミクーラらの巨人騎士を主人公に、半神話的、半歴史的なロシア人の過去を歌っている。
update:2010年05月07日